2018年11月13日 (火)

今日も誰かがシャウトする

研磨を依頼する側と請ける側の間で時々発生するトラブルに、依頼側が本当に必要な「研磨面の仕様」を把握しないまま加工屋に丸投げすることから生じる解釈の違いがある。鏡面化される表面の仕上がりを「表面粗さの値」で指示することは多いが粗さの数字に出てこない問題にマイクロスクラッチの有無が関係していると思われる。目視で傷なし、顕微鏡検査で傷なし、白色光干渉顕微鏡で傷なし、AFM観察で傷なし、加工変質層なしという具合に目的に見合った仕様というものがあるものだ。

加工屋は指示された仕上げを実現するよう努めることは勿論だが、仕事を頼む側がどんな仕上げを指定すれば良いのか理解していないものだから、仕様を指定することをすっ飛ばして「サンプル10枚の研磨をお願いします」という無責任な丸投げオーダーを出してしまうのだ。仕事を依頼する加工屋によっては研削加工を「研磨」と呼んでいるところだってある。( ̄∀ ̄)

綿密な打ち合わせをしてから仕様を決定することが望ましいのは言うまでもないこと。加工を頼む側が仕様を決められないなら加工側と相談して価格と仕様の落としどころを見定めると良い。予算が乏しいのに用途や目的を考慮せず、何でも極上の仕上がりを指示すると目が飛び出るような見積金額になる。

量産品ではない小ロットの限定品は何かと高くつく。治具や消耗品を揃えるところから始まるから納期だって長くなる。新しい材料なら加工条件を追うのにも手間がかかる。加工をやってる者なら当たり前のジョーシキなのだが依頼する側は素人なので金額を見てビックリするらしい。「こんなに高いのか!」と今日も誰かが叫んでいる。

Aki


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2018年10月23日 (火)

複数のルートがある

目標とする完成品の仕様に到達するためにはひとつのルートではなく複数のルートを持っておく必要がある。量産に入って仕様が一部変更になった時、対応できなくなる可能性があるからだ。生産プロセスに付加価値が乏しいと価格を下げてでも顧客に受け入れてもらうしかない。「傷無しで磨くだけ」では競争力に欠けるから、他社製品よりも粗さが小さい表面であるとか平行度が良好であるとか、自分の職場を選んでもらうために付加価値をつけることが重要だ。「選ばれるチカラ」こそが競争力という訳だ。

量産品が順調に流れている時に新たな競争力を得る活動というものをやっておかなければならないのだが、残念ながら現実はそういう事に時間や費用、才能と人材を割くことに躊躇する企業が多いのだ。職場の一部の人間が考えることではなく会社全体で考えなければならない問題だ。飯の種を複数用意しておかないとヤバイんだよ。では具体的に何から始めるのか。必要最低限のユーティリティー、難しいとされる仕様、需要と供給量の見込み、顧客が抱えている悩みなど情報を集めてこなくては始まらない。世の中はどのような仕様を欲しているのか、どのようなデバイスを作りたいのか、加工サイドから顧客に提案できることはないかなど調べられることは山ほどある。

目標に到達するために複数のプロセスを持っている現場は新しい仕様に対応できる底力を持っているものだ。そしてそのような現場は技術が育つ、技術者が育つ。人が育つ職場である。

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2018年9月 4日 (火)

ABTEC2018

金沢大学で開催された砥粒加工学会学術講演会を聴講してきた。 金沢と言えば寒ブリやホタルイカで有名な氷見漁港、富山湾に近いこともあり、午前中は近江町市場が新鮮な魚介類を買い求める客で賑わう。この機会に行って食べてこないともう二度とチャンスが来ないような気がして連日連夜、寿司屋と海鮮料理屋に通った。市場では店頭でボタンエビやホタテ、生ウニを捌いて供してくれる店もある。結構、小遣いを使ってしまったが後悔はしていない。金沢まで新幹線が開通したこともあって東京から2時間半で来れる。ちょっと海の幸が食べたくなったら日帰りも可能な手軽さだ。

さて、肝心の学術講演会。興味ある取り組みがいくつか見つかった。こういう学術講演会は参加するだけでも面白くて日常業務に使えるヒントが見つかる。それ以外にも学術講演会はいくつかの顔を持っているのだ。ひとつは大学院生の取り組みと論文を発表する場としての役割。企業人が発表するのに対して学生がそれをする意味は経験値を稼ぐとかではなく「論文を発表する」という行為に重要な意味がある。院生が卒業資格を得るには論文を執筆するだけでなく公の場で認められる機関紙に審査と査読を経て掲載しなければ「発表」したことにならない。これはどこの学会でも共通した項目である。こういう背景を聴講者は熟知しているので学生の発表に対して容赦ないツッコミや質問を入れる。それがベテラン研究者、ベテラン技術者からの「愛のムチ」なのである。笑

別の顔として企業の最新技術、大学の取り組みと成果を紹介するパビリオンのような役割もあるようだ。企業の取り組みを紹介する「我が社の最新技術紹介」では具体的な加工技術、応用分野、企業がこれから目指すものについてプレゼンがある。短い時間だが質疑応答で興味ある内容に対し、更に切り込んで質問することもできるし、名刺交換して後日、営業を呼んで話を聞くとか企業訪問で詳細を知ることもできる。こういった情報収集は停滞しがちでマンネリ化しやすい現場に新しい空気を通すが如く、仕事に対して新しい付加価値を探す良い機会となっている。

聴講者は目的があって来場している。しかし、現場に立つ人間がどれだけこの中にいるのだろうか。現場の人間だけで集まるイベントとか、あるといいな。

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2018年8月13日 (月)

富士山が見える工場

知人の勤務先に有給取って遊びに行った。生産工場はこれまた非常にロケーションの良い場所で、南アルプスの裾野に広がる緩い傾斜地に建つ工場だから空気が良い。工場の近所はログハウス風の別荘やペンション、お洒落な店舗が点在している。この日は天気が良く気温が高いのに風が心地良くて緑を眺めながら小さなステーキハウスのテラス席で知人と昼食を共にした。正直に言うと、もうここに住んでもいいかなと思ったぐらいに良かった。(笑)

工場の内部には量産現場とは別にラボがある。コア技術を生かした、世界で需要がある商品を扱って売り上げを立てているだけにユーティリティーがしっかり揃っていて憧れる。工場の事務所にありがちな灰色の事務机とかなくて、これまたお洒落な事務所になっている。これもまたいい。自分がいつか加工ラボの設立に関わるチャンスがあるなら加工機だけじゃなく事務所も「スターバックス」みたいにしたいものだ。知人によると、これほど小生が憧れるユーティリティーとお洒落な事務所を持っていて一見、働きやすそうな職場に見えても加工とは別の問題があるのだとか。目に見える優れたユーティリティーと「人の働きやすさ」はまた別の問題だと改めて気が付いた。

一般的な話になるが従業員のモチベーションを折ってしまうのは職務権限が制限されていること、自分の意見が発信しにくい環境、個人の頑張りがなかなか目に見えてこない社風などの理由による。営業、設計、技術、加工に携わる人間が自由に意見を交換、企画提案、課題提起、需要調査、技術プレゼンなど短時間に高密度なミーティングが持てること、そして必ず「自分にできることを最低ひとつは提案する」ことで随分と快適な職場になる。打ち合わせに「自分の意見に責任が持てない評論家」気取りの人間は要らない。誰かの失敗やできなかったことを非難するのではなく「自分にできること」を提案できる人間が集まると打ち合わせは盛り上がる。若者の気力と年配者の知恵を上手に共有できるならその現場はまだまだ伸びるはずだ。

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↑ 娘がペットにすると買ってきた「シシバナヘビ」


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2018年8月 6日 (月)

3Dで描きながら考える

変わった形の部品を結晶で作ることになって、どんな治具を使って作れるものなのかシミュレートする必要があった。実際の形状をイメージするのに手描きではしっくりこないから、動かして全方向から見れるように3D-CADアプリをダウンロードして使うことにした。これがなかなか調子が良くてiPadとApple Pencilで面白いように立体図形が作れる。研究者が持ってきた縦横のいい加減な尺で描かれた手描きの図面を見て治具は決められない。そして、このアプリを使ってモデリングすると加工中の注意点や落し穴が事前に把握できるようになった。頭の中だけの適当なイメージで作業を進めてると「あ、ここダメじゃん!」なんていうのはよくある話。

「こういうの作れますか?」と問い合わせが来るとその場でパパッと実寸通りに描いてみて、どんな治具をどんな材料で作って何を使って削るのか計画が立てやすい。外注に依頼しないと製作できない凝った治具は図面が必要になる。そんな時でも自分でモデリングした立体図形を各CADメーカーのフォーマットで図面出力する機能があるから便利だ。出張先での打ち合わせ、プレゼン、休日のカフェで積極的に活用していこう。来年からはもっともっと仕事は面白くなる。

「働き方改革」ってのは政治家が何かしてくれるんじゃなくて、労働者本人が働き方を自分で模索するということだ。老後の社会福祉制度が充実した海外に移住するのもいい。日本の年金制度は破綻しているが多くある海外の国にはない、この国の良さがまだ残っている。もう少しこの国で自分にできる働き方を探っていきたい。

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2018年7月21日 (土)

「便利屋」から「技術者」へ

現場で作業されている読者の皆さん、この酷暑の中、お疲れ様です。事務所の空調は十分に効いていると思いますが天井が高い工場や発熱量の高い装置を利用されている現場では「快適温度」にならないことがあるのではないでしょうか。それを補うためにスポットクーラーがいくつも導入されてた現場、独立した専用空調機を設置している現場を知っています。古い工場の高い天井は空間容積を重要視するために断熱構造に配慮していないものだから猛暑の季節は「鍋の底」のようです。こまめの水分補給と共に、熱中症にはくれぐれもご注意願いたい。取り返しのつかない大きな事故に繋がる前に。

単結晶なのに平坦に磨きずらい材料というものが存在する。20数年前にアルミ酸ランタンという結晶材を手掛けている作業者が同じ現場にいて「これは不思議な材料だ」と顕微鏡を覗きながら二人で話し合ったものだ。その材料とはそれっきり。そして今回、研究者が作った全く組成の異なる材料が摩訶不思議なモフォロジーを見せてくれたことで過去のアルミ酸ランタンを思い出した。

「平坦化」は楽しいテーマのひとつである。粗加工で凹凸は確認できないが、ケミカルを利用したコロイダルシリカCMPで独特の模様が浮き上がる。これが都合の悪い人に平坦化技術の需要がある。スキルのひとつとして社内に確立しておくと他のポリ結晶にも使えるかもしれない。砥粒は同じままでポリッシャをより硬いものに変更するだけでこの凹凸は少しマシになる。ケミカルはできるだけ弱くするとさらに良くなる場合がある。依頼側の目的と要望を十分に引き出した上で着地点を見出すようにしたい。

この職場を去る前に、足りない工具や消耗品を揃えておけば彼らが自力でやれるようになるだろう。というか、自力でできるようになってもらわないと困る。ここに来た頃は「便利屋」みたいに扱われているような気持ちになってブルーになってた時期もある。自分に何ができるかを考えて積極的に働くようになると仕事が面白くなってくるのは何処の職場であっても共通していることだ。自分がどのような作業者でありたいのか自分で決めなければならない。

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2018年5月31日 (木)

え? 2日もかかるの?

単結晶サファイアのウェハーを複数枚同時にバッチ処理するとポリッシュ工程だけで2日かかると噂で耳にした。本当にそんなにかかるなら大赤字だ。なので「都市伝説」に違いないと思っていたのに、どうやら事実らしい。そりゃ受託加工屋がサファイアから撤退するわけですわ。頑張れば頑張るほど赤字になるなら事業として成り立たない。今は世界的にLED基板としての需要がある材料なのに小生の周囲にサファイア研磨でメシ食ってる加工屋はない。別の材料を量産加工で扱う傍でサファイアを受託加工しているところは数件、知っている。サファイアだけで!っていう研磨屋は知らないな。

数日かけて磨く理由は分かっている。梨地面からチッピングの無い平滑面まで持っていく工程で長時間を要しているのだ。この長い加工時間を「圧倒的な時短加工技術」で圧縮することができないだろうかと以前から考えていたワケで、いよいよ実験するための部材が揃うこともあり、またここで面白い成果が報告できるかもしれない。ところがこの技術が完成しても日本国内にはこの価値を評価してくれる企業が先に述べたように既にない状況である。となると海外の工場にて実績を作ることになるだろう。

これを「技術の流出」と捉える人もいるに違いない。しかし、考えてもらいたい。エンジニアの我々が構築したプロセスは誰かに使ってもらってこそ価値がある。使う場所がない国内に温存することに何の意味がある? 量産技術は使ってもらってナンボである。このサファイア量産向けの加工技術が完成したとして実際の工程に投入するのはコスト対策に良い意味で貪欲な工場だ。そして実績ができたところで日本へ逆輸入される可能性もある。

今後も必要とされる場所に赴く。需要があるのなら国境を、業界の壁を越えてエンジニアとして貢献できる場所、活躍できる場所を求めていこうと思う。だけど、技術開発拠点はここ、ニッポンに置いておく。

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2018年5月 3日 (木)

量産案件は欲しいが・・・

受託加工で売上を確保するには量産案件が数種類あることが望ましい。人件費を含めた諸経費を差し引いても利益が見込める体制を整えないと技術力が高い低いに関わらず、赤字体質に陥るからである。少量多品種というのは「難しい特注案件を数多くこなしますよ」といったアピールに聞こえるかもしれないが、単価が高くても段取りや加工条件の切替、治具の準備に要する時間などを含めると十分な売上確保が現実的に難しい。単価が安くても数量が保証されているものは取り組むに値すると思う。

理想的な案件は「需要が高くて安定供給が求められるもの、難易度が低く、加工単価は高いもの」だ。しかしながらこの業界にそんな美味しい話がそうそう転がっているわけがない。例を挙げるとパワーデバイス半導体材料のSiCでは立ち上がると噂された年を何年も過ぎているのに量産にはまだ至っていない。材料が多く出てこないものだから加工屋が時間を持て余している状況だ。加工単価はシリコンやサファイアよりも高いと思われるがウェハー単価自体も高いこの現状では量産加工と言えないし、この材料の加工だけでメシを食うことはできないと推測される。

一方で数量が大量に出ているLED用サファイアでは「長過ぎる加工時間」のせいで、量産加工を受託すると加工屋が潰れると言われる。結晶成長から手がける材料メーカー、あるいはデバイスメーカーが前加工を内製化して手がけてやっと黒字にできるから、研磨加工のみで量産を引き受ける企業は少ない。加工時間はSiCよりもサファイアの方が遥かに長いのに加工単価はサファイアが驚くほど安い。需要が大きいのに単価が日本人の人件費に合わないのだから海外で量産される流れになった。加工が簡単なものなら価格競争になって人件費の安い海外に日本は太刀打ちできないから「選択と集中」によって難しい材料、難しい仕様で数量が出るものを狙うしかない。さて、そんな案件が存在するのだろうか?

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2018年4月 8日 (日)

見習いたいです(`・ω・´)

男性である知人は、自分の会社を「仕方なく」立ち上げる時に「女性に長く働いてもらえるような職場にしたい」と考えたらしい。出発点がそこからなので今でもブレずにその方針を貫いている。同じ業界を見渡してみると、なかなかそういう職場はなくて男性に有利な職場が目立つ。大きな企業でも女性の社会進出に手厚い支援をしている企業は数えるほどしかない。

出産を機に退職する女性が多いが子供が大きくなってくると何かと出費が多くなる。正規で働いていた職場に復帰できれば過去のキャリアが無駄にならなくて済む。産休期間中に7割程度の給料が支給されるだけではなく、復職してもらうために会社指定の子供の預け場所(保育所)が職場の近所に用意してあれば復帰が容易になる。知人は女性従業員に対してこの辺りまで踏み込んで用意しているというから驚きだ。

超ブラック企業で苦労した彼自身の経験が生かされていると感じる。小生もそういう時期があったので素直に感心しているのだ。自分が万が一、会社を立ち上げる事になってしまったら彼を見習いたい。汗臭いオッサンばかりの職場より女性が多い方がいいに決まってる。笑

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2018年4月 7日 (土)

ポリ結晶の平滑化(続報)

平滑平坦な研磨面を研削加工で得られないかと検討した結果、現状で平均3nmRa程度まで可能と判断した。最終的に研磨で仕上げるなら前工程として丁度良い表面状態だと思う。この材料、数字的には研磨でもこの粗さに到達するのは実はなかなか大変なことらしい。「らしい」とか他人事みたいに打ってるが大変だった。笑

この材料を仕上げた過去、当時は微粒ダイヤモンドを使って平滑化した。加工費もそこそこ高く、数量も数個という限定品だったからである。ところがこれが大量生産で加工単価が激安となると話は変わってくる。ダイヤモンド砥粒では「価格が合わない」のである。そこで、ダイヤモンド以外の激安の消耗品を使って1nmRa以下の平坦平滑面を実現することが可能かを「検討するシリーズ」となった。あと、別に誰かに頼まれたわけではないので個人的な趣味の取り組みであることを最初に断っておく。

しかも、スラリー状に調整されたものは値段が高いからパウダー状で大量に安く購入できるものを選択して使用前に自分でスラリー状に調合すると更に安い。そうすると使用できる砥粒なんて決まってしまう。スラリーにした時に1リッターあたり何円で作れるかを考慮するならパウダーで買おう。良い子の豆知識だ。作業者が正社員だと人件費が高い。最初の立ち上げはともかく、生産作業はアルバイトやパートの人でもできる簡単なレシピにするなら人件費も安くなる。

そこまで考えてたのか!と言われれば・・・そんなの偶然に決まってんだろ!( ^ω^ )。 前置きがすごく長くなったがこの「1nmRa以下の平坦平滑研磨が難しい」とされる材料をダイヤモンドフリーで仕上げた成果が以下の画像になる。この材料でお悩みの現場もあると思うので参考にしていただきたい。

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